Pixel 9シリーズが搭載しているGoogle Tensor G4はベンチマークで見ればやはり低いです。一方でAIの処理性能でみると業界トップクラスとなっており既存のベンチマークで計測出来ない感じです。
とはいえ一部ユーザーはAI性能よりもゲーム性能をより底上げしてほしいと思うかもしれません。今回はPixel 10シリーズが搭載すると予測されているGoogle Tensor G5に過度に期待しない方がいい理由についてまとめたいと思います。
方向性が全く違う。
以前Xperia 1ⅥとPixel 9 Pro XLの比較レビューを公開させて頂いた時のコメントでSoCのスペックがあまりにも差があるとの話でしたが改めてSnapdragon 8 Gen 3とGoogle Tensor G4のアーキテクチャを確認するとクロック数は違えどメインコアは一緒です。
アーキテクチャ | Snapdragon 8 Gen 3 | Tensor G4 |
メインコア | Cortex-X4(3.3GHz)x1 | Cortex-X4(3.1GHz)x1 |
ミドルコア | Cortex-A720(3.2GHz)x3+Cortex-A720(3.0GHz)x2 | Cortex-A720(2.6GHz)x3 |
高効率コア | Cortex-A520(2.3GHz)x2 | Cortex-A520(1.95GHz)x4 |
GPU | Adreno750 | Mali-G715 |
さらにミドルコアにCortex-A720に高効率コアにCortex-A520を採用しているのでコアは一緒です。なのでCPU関連でコアだけを見ると一緒ですがSnapdragon 8 Gen 3の方が周波数が高いです。
さらにSnapdragon 8 Gen 3はミドルコアが5つに対して高効率コアが2つとなっていますがGoogle Tensor G4はミドルコアが3つに高効率コアが4つオーソドックスな構成です。
少なくともSnapdragon 8 Gen 3は効率性よりパフォーマンスの高さを優先している印象を受けます。一方でGoogle Tensor G4はパフォーマンスの高さよりも効率性を重視している印象です。
少なくとも採用しているコアは一緒ながらもSoCに求めていることが全く違うという感じになります。
一方でGPUでみるとGoogle Tensor G4はMali-G715に対してSnapdragon 8 Gen 3はAdreno750を搭載しておりGPUにおいてSnapdragon 8 Gen 3の方が圧倒的に優秀です。
少なくともGoogle Tensor G4とSnapdragon 8 Gen 4ではCPUの方向性がほぼ真逆です。その上でGPUに差があることからもベンチマークでみるとSnapdragon 8 Gen 3の方が優秀という流れになります。
一方でAIの処理性能を測るベンチマークとして1秒間にどの程度のトークンを処理できるかとなりますがSnapdragon 8 Gen 3は20トークン/秒に対してGoogle Tensor G4は45トークン/秒とAIの処理性能で見ればSnapdragon 8 Gen 3はGoogle Tensor G4の半分以下と圧倒的な差があります。
このことからもGoogleが目指しているSoCはQualcommやMediaTekと大きく違います。
またPixel 9 Proシリーズでみると16GBのRAMを搭載しましたが約3GB分ロックされています。ざっくり言えばAICoreを常駐させている感じでTPUにすぐ指令を出せる状態にしている感じです。
そのためAI機能をより迅速に起動することに加え処理も可能とまさにAIに特化しています。AIを使わない人にとって常に3GB分のRAMがロックされているので無駄に感じるかもしれません。
ただ構成やチューニングをみる限りAIが最優先であることを改めて確認することが出来ます。なのでベンチマークやGPU性能をただ計測してパフォーマンスが低いと言っても意味がないです。
Samsung製はネックの可能性。
ただGoogleにとってネックになっている可能性があるのはSamsung製のプロセスノードです。少なくともGoogleは2017年頃から独自SoCの開発に着手していたことを明らかにしています。
一部情報によると本来であれば2020年のタイミングでGoogle Tensorに切り替え予定だったとされています。
それがSoC関連のトラブルで2021年に延期されたと言われおり2020年のフラッグシップモデルがSoCで見ればミドルレンジであったことやPixel 6シリーズのアスペクト比がバラバラだったのはGoogle Tensorが一年ずれたことの影響を受けてラインナップまでグタグタになった可能性があります。
GoogleがどのタイミングでSamsungと共同開発を始めたのか不明ですが2017年で見ればSnapdragon835が全盛期の時でSamsung製において最も評価が高かったSoCだと言われています。
この当時からSamsungと交渉していたのであれば最終的にSamsungを選んでもおかしくなったと思います。ただSnapdragon888の頃から雲行きが怪しくなってSnapdragon 8 Gen 1でグタグタになっています。
結局4nmプロセスノードを採用してからSamsungはプロセスノードにしろ製造にしろ不安定になっており直近で見ても3nmプロセスノードを採用したExynos2500の歩留率がひどいとの話です。
なので最悪の場合はGalaxy S25シリーズに間に合わずSnapdragonのみになるとの予測もあります。2017年頃であればSamsungとTSMCで今ほど露骨な差があった印象はありませんが現時点で見ればTSMCの方が優秀という感じでGoogleにとってSamsung製自体が足を引っ張っている可能性もあります。
Google Tensor G2で見るとプロセスノードやアーキテクチャや製造の問題からも5nmプロセスノードを維持した上でアーキテクチャもほぼ変更せずクロック数だけイジっています。
またGoogle Tensor G4でみるとSamsungの4nmプロセスノードを採用していますが予測されていた最新のパッケージング技術も採用せずある意味Exynos2400の劣化版です。
これがGoogle Tensor G5でTSMCの3nmプロセスノードを採用した上で最新のパッケージングを採用しているとなれば単純にSoCとして大幅にステップアップする可能性が高いと思います。
現時点でアーキテクチャに関する詳細は分かっていませんがすでにテストを開始していること。またQualcommのようにオリオンコアを採用する可能性は低いのでDimensity9400のようにメインコアはCortex-X5を採用するなど順当なアップデートになる可能性があります。
少なくともプロセスノードとパッケージング技術を変更すれば電力効率に処理性能は改善します。ただ一つ言えることとしてGoogleはベンチマークスコアやゲーム性能を強化するためにTSMC製に切り替えるわけではなくGoogle AIをより強化するために変更すると思います。
SoC自体が強化されれば結果的にゲームパフォーマンスなども改善すると思いますがあくまでも結果という感じでGoogleによるとAndroidでより大言語モデルを動作させたいことを明らかにしているのでGemini Nanoをより強化した言語モデルをオフラインで動作させる狙いがあるのかもしれません。
そのためにSoCのパフォーマンスがより必要だと考えた結果TSMCに移行する可能性があります。
Tensor G5はあくまでも初代。
もちろんTSMC製に切り替わるGoogle Tensor G5に個人的にも期待しています。ただTSMC製だから全てあたりというわけではなく過去で見ればSnapdragon810でやからしています。
またSnapdragon 8 Gen 3もパフォーマンスを優先した結果なのか発熱しやすい印象です。そのためGalaxyを見れば分かりやすいですがベイパーチャンバーを大型化して放熱性能を強化しています。
ただそれでもやっとパフォーマンスの持続性を維持できた感じで決して改善はしていないです。また放熱性能が強化された結果発熱が感じやすいのでユーザビリティは下がりやすいです。
ましてどのメーカーにおいても初代というのは完成度がそこまで高くないという印象です。Google Tensor G5は名称から見れば5世代目ですがTSMC製としてみれば初代になります。
そのため今までのSamsung製と勝手が違う部分もあると思うのでリスクはそれなりにあります。
少なくともTSMC製になったからパフォーマンスが改善して電池持ちも良くなって大丈夫と安直に考えるのは危険でSamsung製の集大成となるGoogle Tensor G4の方が安定しているとまさかの逆転現象が発生する可能性がありそれこそベンチマークだけ上がっても意味はないです。
現時点で言えることとしてはゲーム性能を改善するためにTSMC製に切り替える可能性は低いこと。そして実質初代となることからもチューニングが最適化されているかは現時点で分からないこと。
直近の情報からもTSMCの需要過多が発生していることからコストが嵩んでいるとの話です。噂通りであればSnapdragon 8 Gen 4のコストは現行対比で30%近くの値上がりと予測されています。
Samsung製からTSMC製に切り替えるだけでもコストが増加しそうなのに3nmプロセスノードや高度なパッケージング技術の採用とGoogle Tensor G5のコストは大幅に増加する可能性があります。
その中でゲーム性能などを強化するためにGoogleがわざわざコストをかける可能性は低いです。
以前リークしたロードマップでみると2025年は新たに無印に大型モデルが追加されるとの予測で現行モデルの命名規則で見ればPixel 10 XLが追加される可能性があります。
またロードマップにおいてPixel Foldの売れ行きが不透明ということから記載はなかったと言われていますがPixel 9 Pro Foldの販売地域が大幅に拡大したことを考えると順調だと思います。
さらに折畳式機種が順調であればGoogle初のフリップ型を発表する可能性があるとの予測です。仮にPixel 10シリーズに統合するのであれば下半期に6モデルが発表される可能性もあります。
ただ6モデルになると流石に多いのでSamsungのように折畳式機種は分離してほしいかもしれません。
まとめ。
今回はGoogle Tensor G5に過度の期待をしない方がいいと思う理由についてまとめてみました。いつからかコスパの一つの基準としてベンチマークの高さが入っていますがそんなことはないです。
むしろスマホの性能をフルで発揮できているユーザーなんて全体の1割もいないと思います。何よりGoogleがやりたいと思ったAI特化の方向性をこれからもしっかりと継続してほしいです。